法定通貨と違い発行国を持たない仮想通貨は、誰がどこから取引しているのかを知ることが売買にあたって非常に大きな示唆を与えてくれることがあります。
とくに特定仮想通貨が大幅に値上がりするような事態となった時には、その材料を突き止めるのがかなり難しくなるわけです。
特定国からの取引が増えているといった事実を把握することで、内容を推測することが可能になることから「国ごとのトレーダーランキングの変化」を常にキャッチしておくことはきわめて重要なものになるのです。
Datalightのランキングから状況を把握する
(出典:DataLight「仮想通貨トレーダーが多い国ランキング(月間訪問者数)」)
国別の仮想通貨トレーダー数というのはカウントする機関によって多少数字が変わることがありますが、ここでご紹介する「Datalight」は市場からの信頼性も高く、メディアで開示されるデータの出典先としてもよく使われるものとなっています。
圧倒的に利用者が多いのは米国
この表をみていただくと一目瞭然ですが「取引ボリューム」が圧倒的に多いのが米国になります。
米国の場合すべての仮想通貨が取引所で自由に売買できるという状況でもありませんが、投資家数が多いことに加え、一部の投機筋が本格的にビットコインなどを投資の対象として売買していることなども手伝ってトレーダー数は非常に多くなっています。
したがって米国のトレーダーの動向はかなり市場に影響を与えていると考えていいものと思われます。
日本と韓国が拮抗する状況
トレーダー数で次に多いのは日本で、そのあとに韓国が続いており、この3つの国がかなりのマジョリティを占めていることがわかります。
日本と韓国は比較的数が拮抗していますが、日本ではビットコインが上昇するなどすると急激に利用者が増える傾向があり、相場次第で取引者数が変化することが大きな特徴となっています。
また日本の仮想通貨トレーダーは、圧倒的にビットコインの取引をしており、しかも仮想通貨FXを使ってレバレッジ取引に積極的なのも大きな特徴といえます。
海外仮想通貨FXの業者が日本人投資家をターゲットとして積極的に取り込もうとしているのもこうした背景が働いていることがうかがえます。
一方韓国は仮想通貨の黎明期から非常に多くのトレーダーを抱えており、人口は日本の半分以下の5100万人ですから人口に比べてのトレーダー数が非常に多いいことがわかります。
ただ国の政策で様々に規制がかかることも多いことから、日本とは異なる材料でその数が増加したり減少したりするようです。
中国がランク外なのには訳がある
このリストを見ているとすぐに気がつくのは「中国」がランキングに入っていないことです。これは中国当局が仮想通貨取引を規制していることが大きな理由です。
中国では黎明期に仮想通貨が爆発的な人気となり、富裕層が仮想通貨を積極的に購入し市場の中心的存在にまでなりました。
しかし、ICOにより中国人民元の流出を中国政府が食い止めるために禁止としたことから、表面上リストには出てこなくなってしまいました。
ただし、実際には様々な形をとりながらネットアクセスが海外の取引所で売買をしているユーザーもそれなりに存在し、地下に潜った形の取引所でリストにはでてこない影の国が中国になっていることがわかります。
中国では取引の制限が出ると同時に、マイニングについても厳しい規制が行われるようになっており、こちらも仮想通貨には大きな影響を与えているといえます。
新興国からの取引が足元で急増中
このリストではトルコやウクライナ、メキシコといった新興国からのユーザー数が大きく増加しています。
それに限らずベネズエラやアルゼンチンなど、自国通貨が不安定で急激なインフレに悩まされている国民は積極的にビットコインを購入することから口座数は激増中です。
本来はドルやユーロなどに換金することを望む国民が多いのでしょうが、自国通貨の下落を阻止するために各国の金融当局は外貨への両替を厳しく制限するようになっており、やむなくビットコインに資金を交換する国民が増えていることがわかります。
やはり自国通貨がいよいよダメとなると、多くの国の国民が仮想通貨を頼りにする時代が到来している状況にあるのです。
国ごとのトレーダー数の変化は相場変化の鏡として機能
このように仮想通貨はビットコインを中心にして様々な事情や思惑から市場に参入してくるトレーダーが多く発生しており、とくにそれが国別に独特の兆候を示すようになっているのです。
有事の時には金に資金が流れることが多いとされてきましたが、現物の金の場合には換金までにかなり時間がかかることになります。
また、多くの途上国の中央銀行がまさかの事態の時に手持ちの金を売り向かうことから、予想以上に価格が上がらないという問題も起きているようで仮想通貨へのニーズは新興国ほど強くなる傾向が見て取れるわけです。
したがって常にこのランキングを定期的にチェックして、トレンドの変化を掌握しておくことが重要になるのです。