2017年、年末に向けて猛烈な勢いで上昇し仮想通貨取引ブームをけん引したのがビットコインでした。このビットコイン相場の取引が過熱したときにはほぼ全体の6割が日本人個人投資家による取引であったとされております。
しかもさらにその7割以上、つまり取引全体の42%以上がビットコインFXによる「証拠金取引」であったというデータが海外の調査機関から公表されています。
実はビットコインの取引に熱中した国内の個人投資家の70%以上が現物取引ではなく、「仮想通貨FX」という証拠金取引を利用していたのです。
すでに仮想通貨取引の世界ではこの「仮想通貨FX」というものがそれなりに普及している状況にあることがわかります。
ここではこの仮想通貨FX取引のしくみと特徴、メリットやデメリットについてご紹介していくことにいたします。
仮想通貨FXとは
世の中にはかなり幅広い金融商品について「証拠金取引」というものができるようなサービスが用意されています。
FXは法定通貨についての証拠金取引ですし、商品や株式指数、金、銀などの市場で証拠金取引できるものが「CFD」と呼ばれるものです。
仮想通貨FXとは、仮想通貨を対象として、ドルや円など法定通貨との証拠金取引ができるようにした商品となります。
・損益部分だけの受け渡しをする差金決済
この証拠金取引は個別の売買に対してその都度代金を受け渡すのではなく、一定の金額をあらかじめ取引業者に預託し、決済時に売買により生じた損益だけを受け渡すのが大きな特徴となります。
利益や損失の差額をやりとりすることから「差金取引」と呼ばれているわけです。
・レバレッジを掛けることができる
この仮想通貨FXでは通常のFXやCFD取引と同様に証拠金に、一定のレバレッジをかけることができます。
つい最近まで仮想通貨FXについてのレバレッジは国内では青天井の状態で、ほとんど規制がありませんでした。
しかし、レバレッジをかけすぎて大きく証拠金を失う個人投資家が続出したことから、国内の業界団体である「仮想通貨交換協会」は「最大レバレッジを4倍」に規制しはじめています。
かつてFX取引(外国為替証拠金取引)においても、国内の業者は「レバレッジ400倍」まで取り扱っておりましたが、現在は金融庁の指導によりレバレッジ25倍まで引き下げられております。つまり、仮想通貨でもFXと同じ流れになってきたということです。
また日本国内のレバレッジ規制に先立つ形で、2018年8月にはESMA・欧州証券市場監督局が欧州圏での仮想通貨FXの取引については最大2倍のレバレッジ規制をかけている状況です。
しかし国内と欧州に本拠地を置かない「海外の仮想通貨FX」を扱う業者はより高くて魅力的なレバレッジを提供しているのが実情です。
2017年まではビットコインなどでも「昨日50万 ⇒ 明日100万 ⇒ 明後日70万円」などという驚くべき価格変動(ボラティリティ)を示現しておりました。
このため、レバレッジをかけること自体が極めてリスクの高いものでしたが、足元の相場はこうした状況が収束しており、少量だけもっていたら一攫千金というような市場ではなくなりつつあります。
それだけにレバレッジをかけて売買することがよりワークしやすくなっており、FXと同様にうまいタイミングで取引に使いこなすことができれば、ハイレバレッジを利用することが十分に機能する様になっているのです。
そういった意味でも「仮想通貨FX」は改めて見直されている状況にあります。
一部の海外証拠金取引業者は国内の自主規制とは別にハイレバレッジを提供していることから、海外仮想通貨FXも大きく注目を浴びる状況となっているのです。
・証拠金不足の場合には追証を求められる
この証拠金取引の形態では、当初に預託した証拠金に対して一定額の含み損がでたり、強制的な損切りで証拠金不足が発生した場合には、国内業者では「追証」という形で追加の証拠金を求められることがあります。
したがって不意の暴落が起きた場合などには、さらに資金の支払いを業者から要求されることもあらかじめ理解しておかなくてはなりません。
国内仮想通貨FX事業者ではでかでかと「追証なし」を謳っているところもあります。
しかし、約款をよくよくみますとFXとまったく同様で強制ロスカットをなんらかの形で飛び越えるように相場が下落した場合には、証拠金を上回る損失が生じることがあり、この場合に「超過額の支払いを求められる」ことがしっかり記載されています。
国内の金融庁は顧客の損失を業者が肩代わりすることを一切認めていませんから、損失がでればすべて利用者負担となるのです。
ただし海外の業者の場合にはあらかじめ投入した証拠金以上の損失がでてもそれ以上は請求されない「ゼロカット方式」を導入しているところもあり、かなり安全な取引ができるようになっている点は注目すべき内容といえます。
通常のFXとの違いについて
通貨の証拠金取引といえばFXがあまりにも有名な存在ですが、仮想通貨FXと法定通貨のFXの取引とではいくつか大きく異なる点があります。
1)業者によって相対取引の価格がかなり異なる
仮想通貨FX取引はFXにおける相対取引と同様に、業者が提供する価格で売買をすることが必須となります。
しかし、FXのように実需も含めて世界的にかなり大きな市場で取引されるのと違って、あくまで業者が提供する価格での取引を余儀なくされることから、その提示価格が業者によって非常に大きな違いがでる点が通常のFXとかなり異なる部分といえます。
既にFXに慣れた個人投資家は最初はかなりびっくりするのではないかとさえ思うほど、業者間で提示される価格には違いがあるのが現状です。
2)24時間365日のノンストップ取引であること
FXの場合、業者によって多少違いがありますが、月曜日の朝7時ごろから週の終わりのNYタイム終了時である日本時間朝7時ぐらいまで継続して取引が可能となっています。
それに比べて仮想通貨は「24時間、土日も休みなしで365日売買が可能」であるところが大きな違いとなっています。
仮想通貨FX業者ではこうした休みなしの取引にあわせて365日取引可能としているところもありますが、FX同様土日の取引ができないところもあり、取引業者選択にあたっては注意が必要となります。
3)実需がないことから変動値幅が極めて大きい
FXにおける法定通貨ペア同士の取引の場合、それぞれ通貨を発行している国で「実需」の決済や送金のために利用していることから、価格に変動があるといっても年間の変動幅はある程度限られているのが実情です。
たとえばドル円でいいますと直近の年間変動幅は「10円程度」で2018年は104円から114円強といった値幅で変動しています。
2019年1月3日に「フラッシュクラッシュ」と呼ばれる急落がありましたが、それでも値幅は7円程度であり、暴落が起きたから半値になるといった事態には陥りません。
しかしながら仮想通貨は、ビットコインなどは今でも平気で「1日に20%以上価格が変動」することがありうるわけですから、法定通貨の証拠金取引に比べて、依然としてボラティリティの高い商品であることはしっかり理解しておくべきでしょう。
仮想通貨現物取引との違いとは
仮想通貨FXは同じ仮想通貨の「現物取引」とはかなり違う部分があります。
・基本的に買いからしか入れないのが現物取引
現物取引はまさに現物を買い、現物を売るわけですから、まず買いから入らなくてはなりません。そして保有ができればそれを売ることもできるという取引になります。
ですから下げの局面で空売りはできないわけですが、仮想通貨FXは相場の状況にあわせて買いからでも売りからでもマーケットに参入することができるのが現物取引との大きな違いになります。
・現物取引では最大の損失は投入資金に限定
仮想通貨の現物取引は販売所で手にいれるにしても取引所で個人から手に入れるにしてもその名の通り現物ですから、価格が下落して購入価格よりも下がってしまえばもちろん損失を被ることになります。
しかしいわゆる「塩漬け」の状態にして価格が戻るのを待てば、また高値で売れる可能性があり、損失がでても追加で費用が発生することは一切ありません。
もちろん投資という視点でみると資金回転効率は著しく低下することになりますが、いわば購入に支払った代金以上の損失は出ないことになるのです。
しかし仮想通貨FXの場合は一定のレバレッジをかけた取引ですから、万が一暴落などがあって国内業者が設定した強制ロスカット以上に価格が下がってしまいますと、追証という形で追加の損失補填資金を要求されます。
ですから自分で適切な価格でしっかり損切りを行うことができませんと「投入資金以上の資金を失う可能性がある」点には注意が必要です。
・取引価格が現物取引よりもかなり高くなる傾向
これは現状では国内業者における円建ての取引でよくあることですが、同じビットコインを同量購入するにしても国内では現物取引する方が証拠金取引するよりはるかに安いという価格乖離が起きています。
足元の比較的値が張らない状態ではそれほど気にはなりませんが、2017年ビットコインが1BTCで200万を超えた時期には、現物取引が210万のときにレバレッジをかけた証拠金取引が290万を超えたなどということもありました。
いずれにしても「どこの業者で取引するか」が大きなポイントになることがわかります。
ただ、海外の仮想通貨業者において「ドル建て」で売買して場合にはここまで大きな差はでておらず、まさに業者次第、取引条件次第であることが理解できます。
仮想通貨FXのメリットとは
仮想通貨FX取引にはいくつかの明確なメリットが存在します。ここでは大きな4つのポイントをご紹介します。
1)レバレッジを活かして効率的投資ができる
現物取引では50万の資金では50万円分しか仮想通貨を購入できないわけですが、4倍のレバレッジをかければ最大200万円分の通貨購入が可能になる点は非常に投資効率のいいものとなります。
もちろん相場変動がありますから4倍のレバレッジで200万円分全額購入することはできませんが、それでもあきらかに資金回転率は高まることになります。
更に、国内では提供されない海外の業者の高いレバレッジを使えば、少額な資金でも仮想通貨の売買で利益を上げることができるようになるのです。
2)相場状況にあわせて売りからでも買いからでも売買できる
仮想通貨の現物売買では基本的に買いから入らなくてはなりませんが、仮想通貨FXならFXやCFD同様買いからでも売りからでも相場に参入できるのは非常に大きなメリットといえます。
多くの市場参加者は仮想通貨の現物取引ではやはり価格の上昇を期待していますから、ほとんどが買いから市場に参入しています。
それだけにひとたび何かの理由で仮想通貨の価格が崩れ始めると市場はパニック状態となり、流動性が枯渇して必要以上に相場が下落してしまうという局面がこれまでにも何度も起こっています。
したがってこうした状況ならば売りからはいれば確実に大きな利益をあげることができるようになるというわけです。仮想通貨FXではこの部分がもっとも大きなメリットになっているともいえるのです。
3)売買にかかる時間が短い
もうひとつ仮想通貨FXで大きなメリットといえるのは売買の時間がFX同様リアルタイムで非常に早いということです。
現物仮想通貨の売買や送金などを行ってみますとよくわかりますが、売りを出してから実際に注文が成立するまで、送金をしてからそれが実施されるまでというのは驚くほどの時間がかかっています。
正直なところ莫大なトランザクションをリアルタイムで消化できないことがブロックチェーン商業化における最大の問題ではないかと思いますが、そのぐらい現物売買には時間がかかります。
将来的には改善されることになるのかもしれませんが、仮想通貨FXはあくまで業者との相対取引ですから約定が速く、非常にスムーズに取引が可能となるのです。
4)ウォレットから盗まれるという心配なし
ここ数年仮想通貨取引業者が外部からのハッキング攻撃を受けてウォレットから仮想通貨を盗難にあうといった不幸な事態が起きていますが、その殆どがウォレットがハッキングされて盗まれるというものでした。
オンラインから直接アクセスできない「コールドウォレット」がもっとも安心なわけですが、やはり利便性の問題からオンライン直結の「ホットウォレット」を使う業者が多く、そうしたところがまんまと仮想通貨を盗まれる事態に陥っておるのです。
今のところ弁償されないということは起きていませんが、金額が大きくなればすべて全額補償されるとは限らないのもまた事実です。
しかし仮想通貨FXならばそうした問題は一切起こりませんから、オンライン上の取引という点ではかなり安全で安心なものを実現することができるのです。
仮想通貨FXにはもちろんデメリットも存在
仮想通貨FXの取引には大きなメリットがある分、逆にデメリットも存在します。
1)価格変動リスクが大きい
足元の相場では2017年以前にくらべればだいぶまともなレベルになりつつありますが、それでも価格変動リスクは相当大きいのが実情です。
「1BTC:36万円」が「1BTC:50万円」になれば価格差は短時間でもあっという間に14万円ですから、利益の出るほうにレバレッジをかけて売買している分にはこんなにボラティリティがあっておいしい投資はありません。
しかし、逆に持ったポジションと逆さまの方向に動いた場合には莫大な含み損が発生することになりますから、一定以上にレバレッジをかけて売買する際には躊躇なく損切りをすることが求められることになります。
また大きくなったとは言っても市場規模はFXなどに比べれば非常に限られていますから、ちょっと大きな売買玉で市場に持ち込まれただけで予想をはるかに超えるほど動くことがあります。
相場の「値飛び」も驚くほど大きくなりますから、強制ロスカットを下抜けて損失が出るといった異常事態もほかの証拠金取引の相場にくらべて格段に多いのが実情で、これをよく理解した上でレバレッジを決める必要があるのです。
2)業者へのサイバー攻撃のリスク
基本的に仮想通貨FXを専門にやっている業者の場合にはほとんど危険はないのですが、国内で販売所や取引所を構え、しかも仮想通貨FXにも絡んでいる業者の場合には外部からのサイバー攻撃で業者自身の経営がおかしくなるといった通常では考えられないリスクを持つことも十分ありえます。
したがってどの業者で取引をするべきかという問題は店頭FXの業者選び以上に慎重に行う必要がある点を十分に理解する必要があります。
3)証拠金を超える損失に対する支払いリスク
価格変動ともつながる話ですが、FXでも最近では年に1回以上「フラッシュクラッシュ」のような予期せぬ暴落に見舞われることが多くなってきています。
こうした場合証拠金を超えた損失が示現して業者から追加資金の徴収を求められることがあるわけです。
ビットコインFXをはじめとする相場の暴落では市場参加者が限られていたにもかかわらず、国内では追加金の徴収を求められた個人投資家が非常に多かったことはとくに仮想通貨FXでは気になるところです。
もちろん海外の仮想通貨業者で「ゼロカット方式」を導入し一切追証を求めないことが確約されているところで取引するならばかなり安心できます。
しかし、そうでないところはサイバー攻撃のことを心配するのと同じぐらいリスクが高い部分であるということができます。
まとめとして
証拠金という形でレバレッジをかけて差金取引をする仮想通貨FXは、年間365日休みなしで投資チャンスの極めて多い、魅力的な投資法です。
数年前の仮想通貨が暴騰・暴落を連日のように繰り広げてきた相場では、なかなかレバレッジをかけて取引すること自体に無理がありました。
しかし、直近の比較的安定して変動率も以前に比べるとかなり少なくなった相場状況では、仮想通貨FX取引に参入するには絶好のタイミングがやってきていることは間違いありません。
無秩序で表層的な仮想通貨ブームは一段落しましたが、こうした暗号資産が本格的に活躍するのはまだこれからですから、今のうちからしっかりとした投資を行うことは大きな利益機会獲得のチャンスでもあります。
ただ、当然のことながらリスクは常に伴うものですから、しっかりリスクを排除しながら、うまく利用していくことが求められることになります。それができれば現物売買よりもはるかに面白いのが仮想通貨FXの取引となるのです。